アメリカへ行ってきました③


この公演の一番の目的は

日系アメリカ人との”再会”。


何世紀か前に、日本を離れて

アメリカに渡り、

この地に根を下ろした人たちがいました。


普段日本で生活していると、

そうした人たちの歴史を知る機会はほとんどありません。


私自身ほんの最近、

NHK大河ドラマ「いだてん」を見て、

差別をされながらも生き抜いている、日系人たちの過去を

垣間見たぐらいでした。


今回、日本大使公邸での公演を前に、

日系2世3世の方々から戦時中のリアルな話を聞く機会に恵まれました。

第二次世界大戦中、

12万人以上の日系アメリカ人が

強制収容所に送られたそうです。

日系アメリカ人たちは、仕事も財産も失い、身の自由を奪われてしまったのです。

さらに戦局が激しくなると、

アメリカは日系人に軍隊への参加を求めます。

それは母国を否定し、アメリカへ忠誠を誓うことを意味していました。

日系2世たちはアメリカで生まれ育っていますが

その親世代は、日本生まれ。

いわば今日本で生活している私たちと同じ感覚を持っていたはずです。

親戚や知人も、日本に多くいたことでしょう。

彼らの立場に立った時、

身を割かれるような

複雑な心境、悲しみや苦しみが

私の中にも湧き上がってきて、

涙をこらえることができませんでした。

こうした困難に直面しながら、

日系アメリカ人の人たちは、

アメリカ軍の中で、奇跡的な活躍を見せます。

強制収容所から志願した日系二世で構成された442連隊は、

ヨーロッパ戦線に派遣され、

多大な犠牲を出しながらも、
全滅寸前だったテキサス大隊の救出するなど、
目覚ましい戦果を上げ、
アメリカ史上、最強の軍隊と称されることになります。

また語学兵として採用されて、

日本軍からの情報収集にあったった人たちもいました。

日本語を話す日本人の顔をした、アメリカ兵に、日本兵は気持ちを許し

写真を見せながら、国に残してきた家族のことを語った人もいたと言います。

彼ら中には、

洞窟に隠れている日本兵などに、

降参を呼びかける任務に当たった人もいました。

いつ弾が飛んでくるのか分からない、危険な仕事だったと言いますが、

この働きにより、救われた日本人も少なくなかったそうです。


日本人からは裏切り者と言われ

アメリカ軍からも常に監視の対象だったという、日系二世の青年達は

2つの祖国に恥じぬように、という思いで戦い抜いたということでした。


お話の中で、印象的だった言葉が、

「忍耐」「我慢」というフレーズでした。

1世2世たちは、

この言葉通りの精神で、

第二次世界大戦の困難を乗り越え、

戦後は、アメリカで確固たる地位を築いてきたのだそうです。


今の日本に生きる私には

はじめその言葉は、

少し昔じみた響きに聞こえました。

どちらかというと、

自分の感情や感覚を押し殺し、 

耐え続ける、暗いイメージ。


けれども、今回の話を聞いて、

当時の1世2世たちが口にしていた 

我慢、忍耐とは、きっと

どんなに厳しい状況であろうとも、

不平不満に心を乱されるのではなく、

また

悲観するのでも、絶望するのでもなく、

全てを受け入れた上で

今の自分ができうる限りのことを

地道にやり抜く

粘り強さ、たくましさのことなのだろうと、捉えられるようになりました。


家や財産、職業など全てを奪われたとしても、

心の自由だけは誰からも奪われることはありません。

日系人の人々は、

困難な状況をも受け入れ、乗り越えていく心の強さを持ち続けたのでしょう。


今回の公演で演奏した曲は

「両国の国歌」

「マイバラード」

「大地讃頌」


そして映画「君の名は」の主題歌、

「なんでもないや」

〜ぼくら、タイムフライヤー
時を駆け上がる、クライマー〜と歌う曲です。


まさに、何十年の時を駆け抜け

日系1世2世たちの心が、

「自分自身を信じて、たくましく生き抜きなさい」と

私の心に力強く訴えかけてくるようでした。


その力も後押ししてくれたのでしょうか。

大使公邸での公演は大成功でした。

その後行われたレセプションでは、

何人もの日系人の方から

「素敵なハーモニーだったね。」とお褒めの言葉をいただきました。


日系アメリカ人の方々との再会に

心から感謝しています。


今回の旅では、

「ワシントンで合唱をした」と言うシンプルな事実の以上に

自分自身や家族との関係、

合唱団員として、日本人としてなど、

色々な側面で気付きがありました。


不思議なほどにそれらは
一本の線で繋がっているような気もしています。


覆い被さり、見えずらくしていた

目の前のベールがごっそり剥がされ、

ありのままの自分を

もっと素直に認められるようになっているようです。


心の自由さだけは、

誰からも奪われることはありません。

どんな時でも

主体的に選び取っていくことができます。


粘り強く生き抜くことの

強さを感じつつ、

これからも毎日を積み重ねていこうと思っています。

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