お婆ちゃんからの手紙
ママの昔の話は、なぜ息子を惹きつけるのでしょうか。
大学生の時の話をしてほしいと言われ、
岐阜から東京に向かうため、駅の改札で家族と別れた時のことを思い出しました。
とりあえず、私だけ先に上京して、
引っ越しなど、後から両親が手伝いに来てくれることになっていました。
またすぐに会うので、別れとか、旅立ちという特別な感じはなかったものの
改札を通った時、これで自分は家を出たのだと、不思議な感覚になったことを覚えています。
その予感通り、その後、
大学、就職、結婚と実家に戻ることはありませんでした。
旅立ちの時は、本人の意識しない所で訪れるのかもしれません。
東京で暮らし始めてから、実家から食べ物やら、生活雑貨やら、色んなものが、度々送られてきました。
その荷物の中に、ある時、祖母からの手紙が混じっていました。
一緒に暮らしていた頃には手紙なんてもらったことはありません。そもそも祖母は作文が苦手だと、よく口にしていました。そんな祖母が手紙をくれたことは意外でもありました。
その手紙には
私が東京に行ってしまい、
もうこの家には姿がないと思うと
とてもさみしいということ、
そして
自分も身体が弱ってきて、
落ち込むこともあるけれど、
前向きに生きていくといったことが
綴られていました。
東京の大学に行くと言った時、
祖母は
良かったね。
頑張りなさい。というだけで、
寂しくなるね、などということは
一言も言いませんでした。
けれども、寂しいという言葉から、
家を出るまでの18年間、
いつも私を気にかけて過ごしてくれていたんだということを感じ取り
溢れる涙を止められなかったことを
覚えています。
共働きの両親に代わり
小さい頃から
面倒を見てくれた祖母。
離れてみて
初めて気づいた
祖母の思いでした。
話を聞いて息子は
先の読める話だけど、
おばあちゃん、優しかったんだね
と感想を述べました。
飾らないシンプルな優しさが
誰かにとって、
一生の宝物にもなることも
あるのだと思います。
祖母が亡くなって数年、
今も温かい想いで
心を満たしてくれているようです。
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